【高校化学】pHと酸の強弱:濃度・電離・中和を分けて考える

対象:化学基礎~高校化学/前提:モル濃度、10の累乗。発展節では常用対数

「強い酸」と「濃い酸」は同じ意味でしょうか。強弱は水中でH⁺を渡す平衡、濃淡は溶液に含めた酸の量に関わります。pHを計算する前に、何を一定にして比べるかを整理しましょう。

✎水溶液中のH⁺とpH

水中のH⁺は周囲の水分子と相互作用して存在します。反応式ではH₃O⁺と表すこともあります。高校で扱う希薄な溶液では、pHを水素イオン濃度[H⁺]から近似的に求めます。

pH ≈ −log₁₀([H⁺]/1mol L−1)

[H⁺]=10−3mol/LならpH=3です。pHが1だけ小さくなることは、この近似では[H⁺]が10倍になることを表します。pHは濃度に比例した目盛ではありません。

厳密なpHはH⁺の活量で定義します。濃い溶液では活量係数を無視できず、濃度だけの式には誤差が生じます。

この内容を詳しく確かめる:OpenStax Chemistry 2e, 14.2:pH and pOH。

✎強酸と弱酸を比べる

塩酸のような強酸は、通常の希薄水溶液ではほぼ完全に電離すると近似します。酢酸のような弱酸では、未電離の分子とイオンの平衡を考えます。弱酸HAについて、HA⇌H⁺+A⁻と書けば、濃度を使う近似でKa=[H⁺][A⁻]/[HA]です。同じ溶媒・温度でKaが大きいほど強い酸になります。

酸の物質量が同じでも、電離の程度が違えばpHは違います。一方、中和で必要な塩基の量は、最終的に反応する酸の量と反応式によって決まります。最初から存在していたH⁺だけを中和して終わるわけではありません。

この内容を詳しく確かめる:OpenStax Chemistry 2e, 14.3:Relative Strengths of Acids and Bases。

✎例題:強酸を10倍に薄める

1.0×10−2mol/Lの塩酸を、全体の体積が10倍になるように薄めます。水の電離の寄与を無視できるので、初めのpHは2.0、希釈後は濃度が1.0×10−3mol/LとなりpHは3.0です。水素イオン濃度は10分の1、pHは1だけ増えます。

✎弱酸は、希釈時の電離も変わる

弱酸の初濃度をc、電離して生じるH⁺濃度をxとすると、Ka=x²/(c−x)です。xがcより十分小さく、水の電離を無視できれば、x≈√(Kac)となります。

計算練習としてc=0.10mol/L、Ka=1.0×10−5とすれば、x≈1.0×10−3mol/L、pH≈3.0です。x/c=0.010なので、c−xをcとした誤差は小さいと判断できます。濃度を100分の1にしたとき、近似が保たれる範囲では[H⁺]は10分の1です。弱酸を希釈すると電離度が大きくなるため、強酸と同じ濃度比例ではありません。

✎中性は「H⁺がない」という意味ではない

水はH⁺とOH⁻を生じ、[H⁺][OH⁻]=Kwを満たします。25℃ではKw≈1.0×10−14(mol/L)²なので、中性で[H⁺]=[OH⁻]ならpH≈7です。温度が変わればKwも変わります。中性という条件は二つの濃度が等しいことで、あらゆる温度でpHが7という意味ではありません。

酸と塩基を当量混ぜた点でも、できた塩が加水分解する場合はpHが7になりません。例えば酢酸とNaOHの当量点では、酢酸イオンが水からH⁺を受け取るため、通常は塩基性になります。

✎確認問題

pH2の溶液とpH4の溶液では、H⁺濃度は何倍違う?

希薄溶液の近似では10²=100倍で、pH2の方が大きくなります。「2倍」ではありません。

1.0×10⁻⁸mol/Lの塩酸のpHは8と計算してよい?

水の電離を無視できないので不適切です。25℃で理想的とすると、電荷収支と水のイオン積から[H⁺]=(c+√(c²+4Kw))/2≈1.05×10⁻⁷mol/L、pH≈6.98となります。酸を水で薄めただけで塩基性にはなりません。

✎発展:酸性度の比較から緩衝液へ

弱酸と共役塩基の両方が十分に存在する溶液では、少量の酸や塩基を加えてもpHが変わりにくくなります。Kaの式を対数に直すとpH≈pKa+log₁₀([A⁻]/[HA])です。比が同じなら近いpHでも、総濃度が低い溶液ほど加えられる酸・塩基の量には余裕がありません。pKaと共役塩基の解説では、分子の構造と酸性度を結び付けます。

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