定積分の解法――対称性・パラメータ微分・ガンマとベータ関数

定積分は、原始関数を求めなくても値が決まる場合があります。区間の対称性を使う、別の変数へ置き換える、積分をパラメータの関数として微分する、標準的な特殊関数にまとめる、といった方法です。この記事では、計算が短くなる理由と、広義積分で必要になる収束条件を示します。

対称性とウォリス積分までは高校の微分積分から読めます。二重積分・ガンマ関数・パラメータ微分は発展内容です。$\log$は自然対数を表します。

1.定積分を解く前に見るもの

式・区間の特徴試す方法確認する条件
$[-a,a]$偶奇性途中の特異点と積分の存在
$[a,b]$で左右が入れ替わる$x\mapsto a+b-x$変換後の式を足す・引く
$\sin x,\cos x$が対称$x\mapsto\pi/2-x$分母が0にならないか
$[0,\infty)$で$x$と$1/x$逆数置換両端の収束
指数の二乗ガウス積分・尺度変換減衰する係数の正値
べき×べき、三角関数のべきベータ関数両端の指数条件
対数の比、指数の差パラメータ微分・積分交換を支える可積分な上界

特異点がある場合は、計算方法を選ぶ前に収束を確認します。奇関数でも、通常の広義積分が発散する場合には「対称だから0」とは言えません。

2.区間の反転で、2つの積分を組にする

$$\int_a^bf(x)dx=\int_a^bf(a+b-x)dx.$$

$u=a+b-x$という置換です。元の式と変換後の式を足すと、分母が共通になったり、分子の$x$が消えたりします。

例題1 $m>0$に対して$\displaystyle I_m=\int_0^{\pi/2}\frac{\sin^m x}{\sin^m x+\cos^m x}dx$。
解答:分子が入れ替わる

$x\mapsto\pi/2-x$により、同じ積分は分子を$\cos^m x$にした形でも書けます。両方を足すと被積分関数が1になり、$2I_m=\pi/2$。よって$I_m=\pi/4$です。区間内で分母は正であり、端点でも問題なく定義されます。

例題2 $\displaystyle I=\int_0^\pi\frac{x\sin x}{1+\cos^2x}dx$。
解答:$x$と$\pi-x$を足す

$g(x)=\sin x/(1+\cos^2x)$は$g(\pi-x)=g(x)$を満たします。したがって

$$2I=\pi\int_0^\pi\frac{\sin x}{1+\cos^2x}dx=\pi\int_{-1}^1\frac{du}{1+u^2}=\frac{\pi^2}{2}.$$

答えは$\pi^2/4$です。最初から$x$を含む式を部分積分するより、対称性で$x$を消す方が短くなります。

3.無限区間では逆数置換を試す

例題3 $\displaystyle I=\int_0^{\infty}\frac{\log x}{1+x^2}dx$。
解答:収束を確かめてから$x=1/t$

0付近では$|\log x|$で上から抑えられ、無限遠では$(\log x)/x^2$で抑えられるので絶対収束します。$x=1/t,\ dx=-dt/t^2$とおくと

$$I=\int_0^{\infty}\frac{-\log t}{1+t^2}dt=-I.$$

有限の実数として$I=-I$が成り立つため、$I=0$です。発散した積分を形式的に相殺しているのではありません。

一般に、収束する積分で$g(1/x)/x^2=g(x)$なら、$\int_0^{\infty}g(x)\log x\,dx$は同じ考えで0になります。ただし対数を掛けた後の収束も確認します。

4.ウォリス積分は漸化式でまとめる

$$W_n=\int_0^{\pi/2}\sin^n x\,dx\qquad(n=0,1,2,\ldots).$$
$W_n=(n-1)W_{n-2}/n$の導出

$n\ge2$で$\sin^{n-1}x\sin x$として部分積分します。端点の項は0で、

$$W_n=(n-1)\int_0^{\pi/2}\sin^{n-2}x\cos^2x\,dx=(n-1)(W_{n-2}-W_n).$$

移項すれば$nW_n=(n-1)W_{n-2}$です。初期値は$W_0=\pi/2,W_1=1$です。

$$W_{2m}=\frac{(2m-1)!!}{(2m)!!}\frac\pi2,\qquad W_{2m+1}=\frac{(2m)!!}{(2m+1)!!}.$$

二重階乗$n!!$は1つおきの整数を掛けた積で、$0!!=(-1)!!=1$と約束します。例えば$W_6=(5/6)(3/4)(1/2)(\pi/2)=5\pi/32$です。$\cos^n x$の積分も区間反転で同じ値です。

5.対数三角積分は倍角公式で閉じる

例題4 $\displaystyle L=\int_0^{\pi/2}\log(\sin x)dx$。
解答

$\sin x/x\to1$なので、0付近の特異性は$\log x$と同程度で積分可能です。区間反転から$L=\int_0^{\pi/2}\log(\cos x)dx$です。足して

$$2L=\int_0^{\pi/2}\log(\sin x\cos x)dx=-\frac\pi2\log2+\int_0^{\pi/2}\log(\sin2x)dx.$$

最後は$u=2x$と置換し、$\sin(\pi-u)=\sin u$を使うと$\frac12\int_0^\pi\log(\sin u)du=L$です。よって

$$L=-\frac\pi2\log2.$$

ここでも同じ未知積分が戻ってくるため、代数方程式として解いています。

6.ガウス積分――二乗して極座標へ

$G=\int_0^{\infty}e^{-x^2}dx$を考えます。$x\ge1$で$e^{-x^2}\le e^{-x}$なので収束します。非負関数の二重積分として

$$G^2=\int_0^{\infty}\int_0^{\infty}e^{-(x^2+y^2)}dx\,dy.$$

第一象限で$x=r\cos\theta,y=r\sin\theta$とおきます。面積要素は$dx\,dy=r\,dr\,d\theta$、角度は$0\le\theta\le\pi/2$です。

$$G^2=\int_0^{\pi/2}d\theta\int_0^{\infty}e^{-r^2}r\,dr=\frac\pi2\cdot\frac12=\frac\pi4.$$

$G>0$より$G=\sqrt\pi/2$です。尺度変換$u=\sqrt a\,x$と偶対称性から、$a>0$に対し

$$\int_{-\infty}^{\infty}e^{-ax^2}dx=\sqrt{\frac\pi a}.$$

極座標の$r$を落とす、全平面と第一象限の角度を取り違える、平方根の符号を決めない、という3点を検算します。

7.ガンマ関数は指数減衰を含む積分をまとめる

$$\Gamma(s)=\int_0^{\infty}t^{s-1}e^{-t}dt\qquad(s>0).$$

積分表示はNIST DLMF §5.9に整理されています。部分積分から$\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$、$\Gamma(1)=1$なので、正の整数$n$で$\Gamma(n)=(n-1)!$です。$t=u^2$とガウス積分から$\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$も分かります。

$$\int_0^{\infty}x^{p-1}e^{-ax^q}dx=\frac1q a^{-p/q}\Gamma\left(\frac pq\right)\qquad(a,p,q>0).$$

$t=ax^q$と置換すれば得られます。$p>0$は0付近の収束に、$a,q>0$は無限遠での減衰に対応します。

例題5 $\displaystyle\int_0^{\infty}x^4e^{-2x^2}dx$。
解答

$p=5,q=2,a=2$から$\Gamma(5/2)/(2\cdot2^{5/2})$です。$\Gamma(5/2)=(3/2)(1/2)\sqrt\pi$なので、答えは$3\sqrt\pi/(32\sqrt2)$です。

8.ベータ関数は区間両端のべきをまとめる

$$B(p,q)=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}\qquad(p,q>0).$$

この関係はNIST DLMF §5.12に記載されています。条件$p,q>0$は、それぞれ0側と1側の収束条件です。

ガンマ関数の積から導く

$\Gamma(p)\Gamma(q)$を第一象限の二重積分にし、$u=rs,v=r(1-s)$と置換します。$r>0,0<s<1$で、ヤコビアンの絶対値は$r$です。積分は

$$\int_0^{\infty}r^{p+q-1}e^{-r}dr\int_0^1s^{p-1}(1-s)^{q-1}ds=\Gamma(p+q)B(p,q)$$

となります。非負関数なので積分の順序変更が許されます。

$t=\sin^2x$から、$m,n>-1$について

$$\int_0^{\pi/2}\sin^m x\cos^n x\,dx=\frac12B\left(\frac{m+1}{2},\frac{n+1}{2}\right).$$
例題6 $\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^5x\cos^4x\,dx$。
解答

$B(3,5/2)/2=\Gamma(5/2)/\Gamma(11/2)=8/315$です。整数のべきなら$u=\cos x$とおいて$\int_0^1(1-u^2)^2u^4du=1/5-2/7+1/9=8/315$としても求まります。特殊関数を使った結果を初等的な別解で検算できます。

さらに$t=x^q$、続いて$s=t/(1+t)$と置換すると、$q>0,0<p<q$で

$$\int_0^{\infty}\frac{x^{p-1}}{1+x^q}dx=\frac1q B\left(\frac pq,1-\frac pq\right)=\frac\pi q\csc\left(\frac{\pi p}{q}\right).$$

最後はガンマ関数の反射公式$\Gamma(z)\Gamma(1-z)=\pi/\sin(\pi z)$を使っています。$p=0,q$の境界では元の積分が発散します。例えば$p=1,q=4$なら$\int_0^{\infty}dx/(1+x^4)=\pi/(2\sqrt2)$です。

9.パラメータ微分で積分を簡単にする

例題7 $a>-1$で$\displaystyle F(a)=\int_0^1\frac{x^a-1}{\log x}dx$。
解答:$a$で微分すると対数が消える

$x=1$では被積分関数を極限値$a$で連続に補います。$a$で微分すると

$$F'(a)=\int_0^1x^a dx=\frac1{a+1}.$$

$F(0)=0$なので、$F(a)=\log(a+1)$です。$a$を任意の閉区間$[\alpha,\beta]\subset(-1,\infty)$に限定すれば、$|x^a|\le x^{\alpha}$であり、右辺は0から1で積分可能です。この$a$によらない上界が、微分と積分を交換する根拠になります。元の積分も、ある基準値からパラメータを積分した表示によって収束を確認できます。

一般には、パラメータ微分後の関数を、パラメータによらない可積分関数で抑えられるかを調べます。定理の形はTrinity College Dublinの積分記号下の微分に関する講義資料に示されています。単に「式が滑らかだから」という理由だけでは、無限区間や特異点のある積分の交換は保証されません。

10.指数の差は、パラメータについて積分する

例題8 $a,b>0$で$\displaystyle\int_0^{\infty}\frac{e^{-ax}-e^{-bx}}x dx$。
解答:差をまとめたまま扱う

$b\ge a$なら

$$\frac{e^{-ax}-e^{-bx}}x=\int_a^b e^{-tx}dt.$$

右辺は非負なので積分順序を交換し、

$$\int_a^b\left(\int_0^{\infty}e^{-tx}dx\right)dt=\int_a^b\frac{dt}{t}=\log\frac ba.$$

$b<a$では$a,b$を交換して符号を反転すれば同じ式です。0付近では分子が$(b-a)x$と同程度なので差全体は有限値へ近づきます。$e^{-ax}/x$と$e^{-bx}/x$を別々の広義積分へ分けると、各々が0付近で発散してしまいます。

11.確認問題8題

  1. $\int_0^{\pi/2}\cos^4x/(\sin^4x+\cos^4x)dx$。
  2. $\int_0^\pi x\sin x\,dx$。
  3. $\int_0^{\pi/2}\sin^7x\,dx$。
  4. $\int_0^{\infty}e^{-3x^2}dx$。
  5. $\int_0^{\infty}x^3e^{-2x}dx$。
  6. $\int_0^1x^2(1-x)^3dx$。
  7. $\int_0^1(x^2-1)/\log x\,dx$。
  8. $\int_0^{\infty}(e^{-2x}-e^{-5x})/x\,dx$。
解答
  1. 対称性から$\pi/4$。
  2. $x\mapsto\pi-x$で$2I=\pi\int_0^\pi\sin x\,dx=2\pi$より$\pi$。
  3. $(6/7)(4/5)(2/3)W_1=16/35$。
  4. 尺度変換から$\sqrt\pi/(2\sqrt3)$。
  5. $2^{-4}\Gamma(4)=3/8$。
  6. $B(3,4)=2!3!/6!=1/60$。
  7. $a=2$なので$\log3$。
  8. $\log(5/2)$。差をまとめれば0付近の特異性が消えます。

関連:積分のギャラリー。不定積分・広義積分の解説と併せて、どの操作の前に収束や定義域を確認するかを整理してください。