【数学夏祭り】第7’問(関数方程式)について【2020年夏】

先週まで2週間にわたって開催された「数学夏祭り第7問の代替問題(第7’問)について解説・考察してみました。

(2020/09/15追記)
この記事が数学夏祭り問7´の解説賞に選ばれました!(当サイトの解説賞の受賞は問4に続いて2回目です)

 

第1問についてはこちらから→【数学夏祭り】第一問(整数問題)の解説【2020年夏】

第4問についてはこちらから→【数学夏祭り】第4問(確率)の面白さについて【2020年夏】


【数学夏祭り】第7´問


(数学夏祭り(2020) 第7´問)

 考え方

設定が抽象的であり難易度は高めですが、ステップを追って考えれば実は単純な問題です。

1番目の条件は定義域($x$の範囲)が実数全体の集合$\mathbb{R}$のうち非負であるような部分集合であること、2番目の条件は$f(x)$の値域が実数全体の集合$\mathbb{R}$のうち非負であることを意味しています。

さらに3番目の条件より、$f(x)$は上記の範囲で逆関数を持つようです。今回与えられている主な式は$$\small f(x)=\left[f^{-1}\left(\sqrt{f(x)}\,\right)\right]+\sqrt{\langle x\rangle} \quad \cdots (*)$$というもので、ここから出発して考えていきます。

$y=f(x)$ と置くと $x=f^{-1}(y)$ となるので、$(*)$より$$\small y=\left[f^{-1}\left(\sqrt{y}\,\right)\right]+\sqrt{\langle f^{-1}(y)\rangle}$$となります。

ここで $y=7.9\,(>0)$ を代入してみると、$$\small 7.9=\left[f^{-1}\left(\sqrt{7.9}\,\right)\right]+\sqrt{\langle f^{-1}(7.9)\rangle}$$ $$\small 7.9=\left[f^{-1}\left(\sqrt{7.9}\,\right)\right]+\sqrt{\langle K\rangle}$$となります。いま、$\small \left[f^{-1}\left(\sqrt{7.9}\,\right)\right]$は整数であり、$\langle x\rangle$ の定義より $\small 0 \leqq \langle K\rangle<1$ が成り立つから明らかに$$\small 0 \leqq \sqrt{\mathstrut \langle K\rangle}<1$$となるので、$7.9$の整数部分が$\small \left[f^{-1}\left(\sqrt{7.9}\,\right)\right]$であり、$7.9$の小数部分が$\sqrt{\langle K\rangle}$となることが分かります。

したがって$$\sqrt{\langle K\rangle}=0.9$$ $$\therefore \langle K\rangle =0.81$$を得ます。

次に $y=7.9^2\,(>0)$ を代入してみると、$$\small 7.9^2=\left[f^{-1}\left(7.9\right)\right]+\sqrt{\langle f^{-1}(7.9^2)\rangle}$$ $$\small 62.41=\left[K\right]+\sqrt{\langle f^{-1}(7.9^2)\rangle}$$となります。いま、$[K]$は整数であり、$\langle x\rangle$ の定義より $\small 0 \leqq \langle f^{-1}(7.9^2)\rangle<1$ が成り立つから明らかに$$\small 0 \leqq \sqrt{\langle f^{-1}(7.9^2)\rangle}<1$$となるので、$62.41$の整数部分が$[K]$であり、$62.41$の小数部分が$\small \sqrt{\langle f^{-1}(7.9^2)\rangle}$となることが分かります。

よって$$[K]=62$$が得られます。

以上より、$$\begin{align} f^{-1}\left(\sqrt{7.9}\,\right)&=K \\ &=[K]+\langle K\rangle \\ &=62+0.81 \\ &=\color{red}{62.81} \end{align}$$と求められます。

 

 逆関数$f^{-1}(x)$のグラフ

上記の方法はオーソドックスなものだと思いますが、これを応用すれば一般の非負実数$x$についても逆関数$f^{-1}(x)$をあらわに与えることができます。

$$\small f(x)=\left[f^{-1}\left(\sqrt{f(x)}\,\right)\right]+\sqrt{\langle x\rangle} \quad \cdots (*)$$という式をもう少し詳しく見ていきましょう。

先ほどの議論と全く同様に$\sqrt{\langle x\rangle}$は$1$未満であることから、$(*)$より$f(x)$の整数部分が$\small \left[f^{-1}\left(\sqrt{f(x)}\,\right)\right]$に一致すること、つまり、$$\left[f(x)\right]=\small \left[f^{-1}\left(\sqrt{f(x)}\,\right)\right] \quad \cdots ①$$が言えて、$f(x)$の小数部分が$\sqrt{\langle x\rangle}$に一致すること、つまり、$$\langle f(x)\rangle=\sqrt{\langle x\rangle} \quad \cdots ②$$が言えます。

ここで、①式において $x=f^{-1}(y^2)$($y^2=f(x)$ とするのと同じ)とすると、$$\left[y^2\right]=\left[f^{-1}(y)\right] \quad \cdots ③$$を得ます。

また、②式より、両辺正より2乗して$$\langle f(x)\rangle^2=\langle x\rangle$$となり、$x=f^{-1}(y)$ を代入してやると$$\langle y\rangle^2 =\langle f^{-1}(y)\rangle \quad \cdots ④$$を得ます。

よって、③と④より、$$\begin{align} f^{-1}(y)&=[f^{-1}(y)]+\langle f^{-1}(y)\rangle \\ &=\left[y^2\right]+\langle y\rangle^2 \end{align}$$を得るので、変数を$x$にすれば、逆関数$f^{-1}(x)$は$$\color{red}{f^{-1}(x)=\left[x^2\right]+\langle x\rangle^2}$$と表せます。

これをグラフにすると以下の赤線のようになります(灰色の線は $y=x^2\,(x \geqq 0)$ のグラフ)。

今回の問題を解く上では全く気付く必要の無いことですが、実は $k \leqq x<k+1$($k$は非負整数)の範囲で $y=f^{-1}(x)$ のグラフは $2k+1$ 個の領域に分割されています。

これはデジタル(離散的)なグラフとなる $y=\left[x^2\right]$(青色)を考えれば明らかで、$y=\langle x\rangle^2$ のグラフ(緑色)も描くと以下のようになります。

$x^2$の整数部分を$n$とすると、$$n \leqq x^2 <n+1$$ $$\therefore \sqrt{n}\leqq x <\sqrt{n+1}$$が成り立ちます。つまり、$\sqrt{n}$が整数$k$となるとき $n=k^2$ となり、$\sqrt{n}$が次の整数 $k+1$ となるのは $n=(k+1)^2$ のときであるため、その間にはちょうど$$(k+1)^2-k^2=2k+1$$だけ整数が存在します。

そのため、$y=f^{-1}(x)$ のグラフは $k \leqq x<k+1$ の範囲で $2k+1$ 個の曲線に分割されています。ただし、$x$が整数となる点では $y=f^{-1}(x)$ のグラフは連続になっているので、$y=f^{-1}(x)$ のグラフには $k \leqq x<k+1$($k \geqq 1$)の範囲に不連続な箇所が $2k-1$ 個あることが分かります。

因みに、今回の $y=\langle x\rangle^2$ とは少し違いますが、定積分 $\displaystyle \int^{2}_{0}\langle x^2\rangle\,dx$ を計算させる問題が、かつてレッドブル主催の第1回「旧帝戦数学部門」の第1問として出題されたことがあります。今回はその類題(?)と言えなくもないかもしれません。

 

ただ、本問は逆関数の数値を求めるだけで良かったのですが、これが例えば「$\small \displaystyle \int^{79}_{0}f^{-1}(x)\,dx$ を求めよ」といった問題になると、見掛け倒しとは言えないレベルになっていたかもしれませんね・・・。

 

 この問題の作り方

ここまで見てきたように本問では逆関数が先にあり、$f(x)$の形で出題しているのは、わざと題意を分かりにくくするためであると推測できます。実際、$f(x)$を陽関数のようないわゆる「閉じた形」として表示することは困難です。


先ほど導いた$$f^{-1}(y)=\left[y^2\right]+\langle y\rangle^2 \quad \cdots (**)$$という式から問題文中の$f(x)$の式を導くのはそれほど難しくありません。少しやってみましょう。

$(**)$より、$$f^{-1}(y)-\langle y\rangle^2=\left[y^2\right]$$となるので、右辺が整数であり、$\langle y\rangle^2$が$1$未満であることから、$\langle y\rangle^2$は$f^{-1}(y)$の小数部分であることが分かります。これより、$$\langle y\rangle^2=\langle f^{-1}(y)\rangle$$ $$\therefore \langle y\rangle=\sqrt{\langle f^{-1}(y)\rangle}$$を得ます。

また、$(**)$より$\left[y^2\right]$は$f^{-1}(y)$の整数部分となるので、$$\left[y^2\right]=\left[f^{-1}(y)\right]$$と表せて、$y^2$を$y$で置き換えると$$\left[y\right]=\left[f^{-1}(\sqrt{y})\right]$$を得ます(ここで問題文中の条件1、2が効いてくる)。

したがって、$$\begin{align} y&=\left[y\right]+\langle y\rangle \\ &=\left[f^{-1}(\sqrt{y})\right]+\sqrt{\langle f^{-1}(y)\rangle} \end{align}$$となるから、これに $y=f(x)$ を代入して$$\small f(x)=\left[f^{-1}\left(\sqrt{f(x)}\,\right)\right]+\sqrt{\left\langle f^{-1}\left(f(x)\right)\right\rangle}$$ $$\small \therefore \color{red}{f(x)=\left[f^{-1}\left(\sqrt{f(x)}\,\right)\right]+\sqrt{\left\langle x\right\rangle}}$$が得られます。

・・・という訳で、出題サイドとしては関数$$y=\left[x^2\right]+\langle x\rangle^2$$を題材に、少し捻って出題した、といった所だと思います。


(コメント)

本問はどこから手を付けて良いか分からなくなる人が続出するタイプの問題でしたね。しかし問われていることが実は単純なものだということを皆さんは見抜けたでしょうか?

 

故あって計11問が出題されてきた「数学夏祭り」ですが、模範解答とともに、これまで出題されなかった控えの問題が今後公開されるとのことです。こちらも楽しみですね!

“【数学夏祭り】第7’問(関数方程式)について【2020年夏】” への3件の返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です