べき乗/階乗の無限級数の性質②

前回に引き続き、べき乗が階乗で割られた形の数列からなる無限級数について考察してみます。


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問題再掲

和を求める

数列の正体

 

 問題再掲

前回の記事では以下の問題を一般化して遊びました。

《問題》

無限和 $\small \dfrac{1^{2}}{0 !}+\dfrac{2^{2}}{1 !}+\dfrac{3^{2}}{2 !}+\dfrac{4^{2}}{3 !}+\cdots$ を求めよ。

 

マクローリン展開から出発し、ベル数$B_n$を用いて任意の非負整数$n$に対して$$\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(k+1)^{n}}{k !}=B_{n+1}e$$という公式が成り立つことを確認しました。


では逆に、分子が小さいバージョンの級数 $\displaystyle \sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(k-1)^{n}}{k !}$ がどんな値になるのかも気になってきます。

小さい冪について少し調べると、$$\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(k-1)^{1}}{k !}=0$$ $$\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(k-1)^{2}}{k !}=e$$ $$\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(k-1)^{3}}{k !}=e$$ $$\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(k-1)^{4}}{k !}=4e$$ $$\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(k-1)^{5}}{k !}=11e$$ $$\vdots$$となります。これを機械的に求めてみましょう。

 

 和を求める

$e^x$のマクローリン展開$$e^{x} =\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{x^{k}}{k !}$$の両辺を$x$で割ります。$$\dfrac{e^{x}}{x} =\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{x^{k-1}}{k !}$$この両辺を$x$で微分すると、$$\dfrac{e^x (x-1)}{x^2} =\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{k-1}{k !} x^{k-2}$$を得ます。両辺に$x$を掛けると$$\dfrac{e^x (x-1)}{x}=\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{k-1}{k !} x^{k-1}$$となるので、再び微分すると、
$$\dfrac{e^x (x^2-x+1)}{x^2}=\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(k-1)^{2}}{k !} x^{k-2}$$という式が得られます。

最後の式に対して $x=1$ とすると$$\sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(k-1)^{2}}{k !}=e$$という値が得られます。

このような計算を繰り返すことにより、$$\small\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{(k-1)^{3}}{k!}x^k=\dfrac{e^x(x^3+x-1)}{x^2}$$ $$\small\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{(k-1)^{4}}{k!}x^k=\dfrac{e^x(x^4+2x^3+x^2-x+1)}{x^2}$$ $$\small\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{(k-1)^{5}}{k!}x^k=\dfrac{e^x(x^5+5x^4+5x^3+x-1)}{x^2}$$ $$\small\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{(k-1)^{6}}{k!}x^k=\dfrac{e^x(x^6+9x^5+20x^4+10x^3+x^2-x+1)}{x^2}$$ $$\vdots$$となります。

以上より、$x=1$ として各値を得ることができます。

 

 数列の正体

この$$0, 1, 1, 4, 11, 41, 162, 715, \cdots$$という数列$A_n$はオンライン整数列辞典「OEIS」に「A000296」として登録されています。$A_n$は $e^{e^x-1-x}$ という指数型母関数を持つ数列で、閉じた形では表現できないようです(なお、ベル数の指数型母関数は $f(x)=e^{e^x-1}$ です)。

$A_n$はベル数$B_n$と関係があるらしく、$$B_n=A_{n+1}+A_n$$という関係式が成り立ち、一般項はベル数を用いて$$A_n= (-1)^n + \sum_{j=1}^{n}(-1)^{j-1} B_{n-j}$$と表せます。

なかなか得体の知れない数列ですが、$A_n$は「円周上に配置された$n$個の区別できる等分点から隣り合わないような点を複数の組に分けるときの総数」として定義されます。

例えば $A_4=4$ なのですが、これは1~4の数字を

{1},{2},{3},{4}
{1},{2,4},{3}
{1,3},{2},{4}
{1,3},{2,4}

と分ける方法の数に相当し、$A_5=11$ については1~5の数字を

{1},{2},{3},{4},{5}
{1},{2},{3,5},{4}
{1},{2,4},{3},{5}
{1},{2,5},{3},{4}
{1,3},{2},{4},{5}
{1,4},{2},{3},{5}
{1},{2,4},{3,5}
{1,3},{2,4},{5}
{1,3},{2,5},{4}
{1,4},{2},{3,5}
{1,4},{2,5},{3}

と分ける方法の数に相当しています。


(コメント)

前回に続いてべき乗/階乗の形をした無限級数の性質について調べてみました。数列と無限級数には面白い関係が沢山あります。入試問題でも背景になっていたりするので、時々気にしてみると思わぬ発見があるかもしれません・・・!

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