ルート2のルート2乗のルート2乗(2020年横浜市立大学前期理系数学第2問)

もうすぐ2次試験ですね! 今回は2020年の横浜市立大から一風変わった証明問題を取り上げます。


 

以下の問いに答えなさい。

(1)(22)2の値を求めなさい。

(2)2 が無理数であることを証明しなさい。

(3)xyの値が有理数になる無理数の組(x,y)が存在することを証明しなさい。

(2020年横浜市立大学 前期理系第2問)

 

 考え方

計算自体は容易ですが(3)の考え方が面白い問題です。普通なら例えば(2,log2100)などの組み合わせが思い付くでしょうが、ここでは誘導設問に従うのが自然です。22が無理数かどうかを調べなくても(3)の証明ができてしまうというのが本問の眼目です。


解答例

 

(1)

(22)2=(2)22=(2)2=2より、求める値は2である。

 

 

(2)

背理法を用いて2 が無理数であることを証明する。

 

2 が有理数であると仮定すると、2=qppqは互いに素な正の整数)と置ける。この両辺をそれぞれ2乗すると2=q2p2 2p2=q2となるからq2が偶数であることが必要である。q22を素因数にもつとき、q2を素因数にもつから q=2qqは正の整数)と置ける。これを上式に代入すると2p2=(2q)2 p2=2q2となるから、同様にpも偶数となるが、これはpqが互いに素であることに矛盾する。よって仮定は誤りであるから、2 は無理数である。

 

 

(3)

22が有理数か無理数か不明であっても以下のように証明することができる。

 

(ア)22 が有理数と仮定したとき

(2)より2 は無理数であるから、(2,2)は題意を満たす無理数の組である。

 

(イ)22 が無理数と仮定したとき

(1)より (22)2=2 が成り立ち、(2)より2 は無理数であるから、(22,2)は題意を満たす無理数の組である。

 

したがって、22が有理数であっても無理数であっても、xyの値が有理数になる無理数の組(x,y)が存在することが示される。

 


 

難しい問題ではありませんがユニークな問題でした。これに関連して、高校数学の範囲を超えますが「ゲルフォント=シュナイダーの定理」を紹介しておきます。これは以下のような主張です。

α0,1以外の代数的数、βを有理数ではない代数的数としたとき、αβは超越数である」

有理数係数からなる0でない多項式の根となる複素数を「代数的数」と言い、代数的数でない数を「超越数」と呼びます。この定理により、221.63 は無理数(特にこの場合は超越数)であることが言えます。

無理数の無理数乗は必ずしも無理数にはならない例が本問の背景になっています。因みに、12の例のように有理数の無理数乗も無理数とは限りません。

本問の類題として、1986年の阪大前期理系数学第1問があります。こちらの問題ではlog34が無理数であることを証明させる誘導設問が付いています。これより、(3,log34)は無理数の無理数乗が有理数となる例の一つとして与えられます。

今回扱った横市の問題では22が有理数か無理数か分からなくても証明できてしまう点がやや目新しいところかと思います。

余談ですが222(22)2は異なる値を取ります。括弧の有無で指数計算の順序が変わるためです(分かりにくい場合は1033(103)3を比べてみましょう)。前者は「ルート2のルート2のルート2乗乗」、後者は「ルート2のルート2乗のルート2乗」と読みます。

“ルート2のルート2乗のルート2乗(2020年横浜市立大学前期理系数学第2問)” への2件の返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

©Copyright 2017-2025 理系のための備忘録 All Rights Reserved.