創作整数問題#76解法&創作整数問題#77

季節はすっかり春ですね。

世の中に「新しい生活様式」が導入されてから1年が経とうとしています。この1年間は思うような学校生活、社会人生活を送れなかったという方がほとんどだと思います。これからの1年もひょっとすると満足に自由を満喫できないかもしれません。

こういう先が見えない大変な時世にこそ、精神的に参ってしまうの防いでくれるような趣味を幾つも用意しておきたいものです。没頭できる趣味はいざという時の味方になってくれます。もちろん、ライブ会場に出掛けるといった趣味や、海外旅行などはなかなか叶わないでしょう。しかし、多趣味な人や様々なことに興味を持っている人ほど “Negative capability” が養われるものです。

現状に満足したり諦めたりするということではなく、現状を受け入れつつもその範疇で積極的に生活する、というマインドが必要なのではないでしょうか。インターハイが無くなっても、コンクールが無くなっても、・・・結局その現実を受け入れて生きていかなければなりません。そんな打ち拉がれている(あるいは、これから打ち拉がれるかもしれない)自分の心の支えになるような趣味や気晴らしを沢山見つけておいて下さい。そこで出会った趣味は、きっと今後の長い人生を豊かにしてくれます。


2ヶ月くらいほったらかしになってしまいましたが、今日も整数問題をやっていきましょう!


創作整数問題#77


《問題#77》

以下の2つの条件を同時に満たすような座標平面上の放物線$C$が存在することを示せ。

条件$(1)$:異なる$3$つの格子点で、これらを頂点とする三角形が二等辺三角形にならず、かつ、その面積が$77$となるようなものが$C$上に存在する。

条件$(2)$:整数 $a,b,c$ を用いて $y=ax^2+bx+c$ という形の方程式で表せる。

ここで、座標平面上における格子点とは、$x$座標と$y$座標がともに整数であるような座標平面上の点である。

(創作問題)


まずは条件$(1)$を式に直すことを考えましょう。条件$(2)$は$C$が整数を係数とする放物線である、ということを言っているだけです。放物線$C$の式の置き方を工夫すると計算が簡単になります。

 

» 例えば…

条件を満たすものとしては $\color{red}{y=77x^2}$ などがあります。この放物線上で$(0,0),(1,77),(2,308)$を取れば、これらを頂点とする三角形は二等辺三角形ではなく、かつ、その面積は$77$となります。$y=77x^2$ を色々と平行移動すれば問題文の条件を満たすような放物線が無数に得られます。

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創作整数問題#76(解き方)


$76^n-76n$ が$20$でも$21$でも割り切れる正の整数となるような最小の正の整数$n$を求めよ。

素直に剰余類で考えていけばOKです。$20$でも$21$でも割り切れるということは、$3$、$4$、$5$、$7$のすべてで割り切れるということを意味しています。

解答例

 

$N=76^{n}-76 n$ とする。$N$が$3$、$4$、$5$、$7$のすべてで割り切れるような$n$を求めたい。

 

$N$は任意の正の整数$n$に対して$4$の倍数となるから、つねに$4$で割り切れる。また、$$N \equiv 1-n \pmod{3}$$より、$n \equiv 1 \pmod{3}$ が必要であり、$$N \equiv 1-n \pmod{5}$$より、$n \equiv 1 \pmod{5}$ が必要となる。これより、$0$以上の整数$i$を用いて$$n=15i+1 \quad \cdots ①$$と置ける。

 

また、$$N \equiv (-1)^n+n \pmod{7}$$となるから、$n$が奇数のときは $n \equiv 1 \pmod{7}$、$n$が偶数のときは $n \equiv 6 \pmod{7}$ であればよい。これより、$0$以上の整数$j$を用いて$$n=14j+1,\,14j+6 \quad \cdots ②$$という形で表せることが必要となる。

 

以下、①と②を連立して解を求める。①と②の前者と連立すると$$15i+1=14j+1$$ $$\therefore 15i=14j$$となる。$15$と$14$は互いに素であるから$j$は$15$の倍数であることが必要である。よって$0$以上の整数$m$を用いて$$j=15m$$と置けば$$n=14j+1=210m+1$$となる。

 

また、①と②の後者と連立すると$$15i+1=14j+6$$ $$\therefore 15i-14j=5$$となり、この両辺から$$15 \cdot 5-14 \cdot 5=5$$を辺々引くと、$$15(i-5)-14(j-5)=0$$ $$\therefore 15(i-5)=14(j-5)$$となる。$15$と$14$は互いに素であるから $j-5$ は$15$の倍数であることが必要である。よって$0$以上の整数$m$を用いて$$j-5=15m$$と置けば$$\begin{align} n &=14j+6 \\ &=14(15m+5)+6 \\ &=210m+76 \end{align}$$となる。

 

以上より、求める正の整数$n$は$$n=210m+1,\,210m+76$$のいずれかの形で表せる。ここで $m=0$ とすると $n=1,\,76$ を得るが $n=1$ のときは $N=0$ となり正の整数でないので不適。したがって求める最小の正の整数$n$は$$n=\color{red}{76}$$である。

 

$n=1$ は自明な解ですが本問の場合は除外されます。$N$が$20$でも$21$でも割り切れる「正の整数」になるかどうかをしっかり確かめて下さい。

素因数で分けずに議論すると以下のようになります。

解答例②

 

$20$および$21$を法とする合同式により、$$\small 76^{n}-76 n \equiv\left\{\begin{array}{ll}
16^{n}-16 n & \pmod{20} \\
13^{n}-13 n & \pmod{21}
\end{array}\right.$$と簡単になる。

 

$16^{n}$および$16 n$を$20$で割った余りは以下のように周期$5$で繰り返す。$$\small \begin{array}{c|ccccc}
n & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 \\
\hline 16^{n} & \color{red}{16} & 16 & 16 & 16 & 16 \\
16 n & \color{red}{16} & 12 & 8 & 4 & 0
\end{array}$$これより、$16^{n}-16 n$ が$20$で割り切れるのは、$n$を$5$で割った余りが$1$のときに限られる。このとき$0$以上の整数$k$を用いて$$n=10k+1,\,10k+6$$と置ける。

 

$n=10k+1$ を $13^{n}-13 n$ に代入して整理すると、$$\begin{align} & \quad \ 13^{10k+1}-13(10k+1) \\ &=13 \cdot 169^{5k}-130k-13 \\ & \equiv 13 \cdot 1-4k-(-8) \pmod{21} \\ &\equiv -4k \pmod{21} \end{align}$$となるから、$4k$が$21$で割り切れるような$k$のとき、$13^{n}-13 n$ は$21$で割り切れる。ここで$4$と$21$は互いに素であるから、そのような$k$は$21$の倍数でなければならない。よって$0$以上の整数 $l$ を用いて$$k=21\,l$$と置けるから、$$n=10k+1=210\,l+1$$を得る。

 

次に $n=10k+6$ を $13^{n}-13 n$ に代入して整理すると、$$\begin{align} & \quad \ 13^{10k+6}-13(10k+6) \\ &=169^{5k+3}-130k-78 \\ & \equiv 1-4k-(-6) \pmod{21} \\ &=7-4k \end{align}$$となるから、$4k$を$21$で割った余りが$7$となるような$k$のとき、$13^{n}-13 n$ は$21$で割り切れる。

 

$4k$を$21$で割った余りは以下のように周期$21$で繰り返す。$$\small \begin{array}{r} \begin{array}{c|cccccccccc}
k & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 & 7 & 8 & 9 & 10 & 11 \\
\hline 4k & 4 & 8 & 12 & 16 & 20 & 3 & \color{red}{7} & 11 & 15 & 19 & 2
\end{array} \\ \begin{array}{ccccccccccc}
12 & 13 & 14 & 15 & 16 & 17 & 18 & 19 & 20 & 21 \\
\hline 6 & 10 & 14 & 18 & 1 & 5 & 9 & 13 & 17 & 0
\end{array} \end{array}$$これより、$0$以上の整数 $l$ を用いて$$k=21\,l+7$$と置けるから、$$n=10k+6=210\,l+76$$となる。

 

以上より、求める正の整数$n$は$$n=210\,l+1,\,210\,l+76$$のいずれかの形で表せる。$n$が最小となるのは $l=0$ のときであり、$n=1$ のとき与式 $76^{n}-76 n$ は正の整数とならないから$$n=\color{red}{76}$$が求める最小の正の整数である。

 



 

$20$と$21$のまま考えても良いですが、素因数を分けて剰余を考えるのがセオリーです。いずれにせよ、それほど難しくはありません。

解答例①では $\bmod{7}$ を調べた後に偶奇で分けて議論していますが、これは$(-1)^n$の符号が$n$の偶奇で異なるためです。解答例②では $n=5k+1$ をそのまま代入して$$13^{k+1}-2k+8 \pmod{21}$$の値を調べても良いのですが、偶奇で分けることで少し計算の手間を削っています。ただ、結局は表を作って剰余を調べることになるので、あまり労力は変わりません。

なお、$76^{76}-76 \cdot 76$ が$75$、$76$、$77$で割り切れることは式変形により容易に示され、$20$でも$21$でも割り切れることが確かめられます。

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