創作整数問題#92解法&創作整数問題#93

かなり久しぶりの更新となりました。今年度中は更新頻度が極めて低調となる予感がします…。


創作整数問題#93


《問題#93》

(1)実数係数の4次式f(z)について、方程式 f(w)=0 を満たす複素数wが存在するとき、共役な複素数wが方程式 f(w)=0 を満たすことを示せ。ただし複素数www を満たすとする。

(2)z=1+iz=1+i を根とする実数係数の4次式f(z)を一つ求めよ。

(3)934+4 は異なる3個の素因数をもつ。これらをすべて求めよ。

(創作問題)


素因数分解に関する問題です。予備知識のある人にとっては少々大仰な誘導かもしれません。「z=1+iz=1+i を根とする」という表現は見慣れないかもしれませんが、要するに「f(1+i)=0f(1+i)=0 を満たす」ということを言っています。

 

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(1)証明略

(2)f(z)=z4+4

(3)934+4=5×1693×8837

934+4 を書き下すと74805205となりますが 5×14961041 から先が大変です。大人しく誘導に従いましょう。

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創作整数問題#92(解き方)



一般化された証明問題には数学的帰納法が有効です。各設問の結果がヒントになっています。(4)では(3)の結果を利用するのですが、89という数字を上手く活かせるかがカギとなります。


解答例

(1)

任意の正の整数nについてFn+2=Fn+1+FnかつFn+1>0,Fn>0が成り立つことを数学的帰納法により示す。

(A)n=1 のとき

F3=F22+(1)2F1 より、F3=1+11、すなわち F3=2 を得る。したがって、F3=F2+F1 かつ F3>0 となるから、およびが成り立つ。

(B)n=kk=1,2,)のとき

Fk+2=Fk+1+Fk かつ Fk+1>0,Fk>0 が成り立つと仮定する。

Fn+2=F1+12+(1)n+1Fn よりFn+2Fn=Fn+12+(1)n+1と変形できるので、これに n=kn=k+1 を代入してFk+2Fk=Fk+12+(1)k+1Fk+3Fk+1=Fk+22+(1)k+2
辺々加えて、順次式変形する。Fk+2Fk+Fk+3Fk+1=Fk+12+Fk+22+(1)k+1+(1)k+2 Fk+2Fk+Fk+3Fk+1=Fk+12+Fk+22 Fk+3Fk+1Fk+12+Fk+2FkFk+22=0 Fk+1(Fk+3Fk+1)+Fk+2(FkFk+2)=0 Fk+1(Fk+3Fk+1)+Fk+2(Fk+1)=0(Fk+2=Fk+1+Fk) Fk+1(Fk+3Fk+1Fk+2)=0いま、仮定より Fk+1>0 であるからFk+3Fk+1Fk+2=0 Fk+3=Fk+2+Fk+1が従う。仮定より、 Fk+1>0 かつ Fk>0 であるから Fk+2=Fk+1+Fk>0 が成り立つ。よって n=k+1 のときもおよびが成り立つ。

以上、(A)と(B)より、数学的帰納法により任意の正の整数nについておよびが成り立つことが示された。

(2)

以下では(1)で示した結果を用いる。

(A)n=2,3 のとき、Fm+2=Fm+Fm+1=FmF1+Fm+1F2およびFm+3=Fm+1+Fm+2=Fm+2Fm+1=FmF2+Fm+1F3より、()が成り立つ。

(B)nk(2)以下のとき()が成り立つと仮定する。
Fm+k=FmFk1+Fm+1Fk Fm+(k1)=FmFk2+Fm+1Fk1これらの辺々を加えると、Fm+k+Fm+(k1)=FmFk1+Fm+1Fk+FmFk2+Fm+1Fk1 Fm+(k+1)=Fm(Fk1+Fk2)+Fm+1(Fk+Fk1) Fm+(k+1)=FmFk+Fm+1Fk+1が導かれる。これより、n=k+1 のときも()が成り立つ。

以上、(A)と(B)より、数学的帰納法により2以上の任意の正の整数nについて()が成り立つことが示された。

(3)

正の整数nがある正の整数mで割り切れるとき、n=mppは負でない整数)と置ける。ここで、pに関する数学的帰納法を用いる。

(A)p=1 のときは n=m なので Fn=Fm より、FnFmで割り切れる。

(B)p=kkは正の整数)のときFmkFmで割り切れると仮定する。(2)で示した()式より、Fn=Fm(k+1)=FmkFm1+Fmk+1Fmとなるが、仮定よりFmkFmで割り切れるから、FnFmで割り切れる。これより、p=k+1 のときもFmpFmで割り切れることが従う。

以上の議論はmnの約数であるときにつねに成り立つから、(A)と(B)より、数学的帰納法により任意の正の整数nについて、nがある正の整数mで割り切れるときFnFmで割り切れることが示された。

(4)

Fn+2=Fn+12+(1)n+1Fnより、Fn+12=Fn+2Fn(1)n+1と式変形できる。これに n=2022 を代入して、(F2023)2=F2024F2022(1)2023=F2024F2022+1を得る。ここで、F11=89 であること、および、2024=11×184 であることに着目すると、(3)の結果よりF2024F11、すなわち89で割り切れる。

よって、(F2023)289で割ったときの余りは1である。


コメント

(F2023)289で割ったときの余りを誘導無しで求めるのはかなり難しいと思います。F11=89 は(3)までの結果を踏まえて連想して欲しいところですが、難しかったかもしれません…。

今回の問題#92ではそれなりに丁寧な誘導設問を付けました。最近の東大数学の整数問題では、論証系の小問を幾つか設置して、それまでのヒントを総動員させる求値問題を最後に置くという、本問のようなタイプの出題形式が増えているように思います。

フィボナッチ数列はの大学入試問題で頻繁に出題される題材の一つです。漸化式の式変形に慣れていないためか証明問題でつまずく受験生は多いので、漸化式を題材とする論証問題(特に数学的帰納法を用いた証明)には慣れておきたいですね。本問の(2)で示した関係式は「フィボナッチ数列の加法定理」とも呼ばれる有名な式です。数学的帰納法で証明できるということは知識として知っておくと良いでしょう。

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