媒介変数表示された曲線の囲む図形(2016年東京工業大学前期数学第5問)

東工大の過去問から、媒介変数表示された曲線の囲む図形の求積問題を取り上げます。


問題

(2016年 東京工業大学 前期第5問)

大学入試数学問題集成様より許可を得て転載

 

 考え方と解答例

媒介変数表示されている曲線に関する問題では、$x$と$y$の挙動を大まかに捉えることが重要です。まずは導関数の符号に着目すると良いでしょう。例えば、$0 \leq x \leq \dfrac{\pi}{2}$ において$\dfrac{dy}{dt}$が正なので$y$は単調増加であることが分かりますね。また、$\dfrac{dx}{dt}$は $t=\dfrac{\pi}{4}$ で$0$となるので、$x$は極値を持つことが分かります。これを系統的に調べるために増減表を作成し、点$(x,y)$の大まかな挙動を調べます。

(2)では、いくつかの計算方法が考えられます。(1)で描いた曲線$C$の概形から、計算な手間が少なくなるように積分を実行します。


解答例

(1)

曲線$C$ $$\begin{cases}
x = 3\cos t-\cos 3t \\
y = 3\sin t-\sin 3t
\end{cases}$$について、各式を$t$で微分すると$$
\begin{aligned}
& \dfrac{d x}{d t}=-3 \sin t+3 \sin 3 t=6 \cos 2 t \sin t \\
& \dfrac{d y}{d t}=3 \cos t-3 \cos 3 t=6 \sin 2 t \sin t
\end{aligned}
$$となるから、増減表は以下のようになる。$$\begin{array}{c||c|c|c|c|c}
\hline t & 0 & \cdots & \dfrac{\pi}{4} & \cdots & \dfrac{\pi}{2} \\
\hline \dfrac{d x}{d t} & & + & 0 &-& \\
\hline \dfrac{d y}{d t} & & + & + & + & \\
\hline\left(\dfrac{d x}{d t}, \dfrac{d y}{d t}\right) & & \nearrow & \uparrow & \nwarrow & \\
\hline(x, y) & (2,0) & \cdots & (2 \sqrt{2}, \sqrt{2}) & \cdots & (0,4) \\
\hline
\end{array}$$これより、$C$ の概形を図示すると以下のようになる。

(2)

曲線$C$と$x$軸と$y$軸で囲まれた部分の面積を$S$とする。(1)で描いた図形より、$$\small \begin{aligned} S &= \int_{0}^{4} x dy = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} x \frac{dy}{dt} dt \\
&= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} (3 \cos t-\cos 3t)(3 \cos t-3 \cos 3t) dt \\
&= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} 3 (3 \cos^2 t-4 \cos 3t \cos t + \cos^2 3t) dt \\
&= 3 \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \left( \frac{3}{2} (1 + \cos 2t)-2(\cos 4t + \cos 2t) + \frac{1}{2} (1 + \cos 6t) \right) dt \\
&= 3 \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \left( 2-\frac{1}{2}\cos 2t-2 \cos 4t + \frac{1}{2}\cos 6t \right) dt \\
&= 3 \left[ 2t-\frac{1}{4} \sin 2t-\frac{1}{2} \sin 4t + \frac{1}{12} \sin 6t \right]_0^{\frac{\pi}{2}} \\
&= 3\pi \end{aligned}$$と計算できる。よって求める面積は$$\color{red}{3 \pi}$$である。


コメント

東工大数学で出題される微積分の問題としては易しい部類ですが、積分計算しやすい形にしておかないと計算が煩雑になる危険性があります。$\dfrac{d x}{d t}$と$\dfrac{d y}{d t}$の式は加法定理や半角の公式を使って整理すると次数が上がらずに済みます。3倍角の公式を使ってしまうと3次式を相手にしなくてはなりません。

「考え方」の項目でも触れましたが、(2)の積分は$x$方向に実行することも可能です(解答例では計算を簡単にするために$y$方向に積分しています)。この場合は $0 \leq x \leq 2$、$2 \leq x \leq 2\sqrt{2}$ という2つの区間に分けて計算する必要があり、$y$方向に積分するよりもやや手間が増えます。

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