2020年センター試験 数学ⅡB第3問 解説

こんにちは。管理人のpencilです。

やっとセンター試験が終了しましたね!受験された皆さん、お疲れ様でした。二次試験が控えている人は油断せず最後まで勉強に取り組んで下さい!

さて、センターは今年で最終年度でした。センター試験の数学は誘導を削ると難関大に匹敵するレベルの問題になることが多々あります。二次対策も兼ねて、センター数学ⅡBの問題を記述式風にアレンジして解答していきます!


《問題》

$n$を正の整数とする。数列$\{a_n\}$は漸化式$$a_{n+1}=\dfrac{n+3}{n+1}\left\{3 a_{n}+3^{n+1}-(n+1)(n+2)\right\}$$で定められる。$a_1=0$ とするとき、次の問いに答えよ。

(1)$b_{n}=\dfrac{a_{n}}{3^{n}(n+1)(n+2)}$ と置くとき、$b_{n}$を$n$を用いて表せ。

(2)$a_n$を$n$を用いて表せ。

(3)$a_n$の初項から第$2020$項までの和を$3$で割った余りを求めよ。

(センター試験2020年 数学ⅡB 第3問)


漸化式をいきなりドンと与えるタイプの問題は本試験ではやや珍しいですね。昨年のセンター追試験の数学ⅡBで出題された数列と同系統の問題でした。追試まで解いて対策していた人は少し有利だったかもしれません。

漸化式の形だけ見ると非常に複雑です。$b_{n}$のヒントが無いと解答は難しいでしょう。また、それなりに計算量にボリュームがあり、解答の途中でケアレスミスを誘発しやすい階差数列が登場することもあって、予備校各社は「昨年比でやや難」と評しています。(階差数列については当サイトの「階差数列の定義・扱い方」のページで解説しているので参考にして下さい!)

(1)は$b_{n}$の形に注目して漸化式を式変形していきます。$b_{n}$が求められれば(2)はオマケみたいな設問です。(3)は完全にオマケ問題ですが、ちょっと捻りがあります。引っ掛からないように注意です。

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解答例

 

(1)

 

漸化式$$a_{n+1}=\dfrac{n+3}{n+1}\left\{3 a_{n}+3^{n+1}-(n+1)(n+2)\right\}$$の両辺を$3^{n+1}(n+2)(n+3)$で割ると、$$\begin{align}b_{n+1}&=b_{n}+\dfrac{1}{(n+1)(n+2)}-\dfrac{1}{3^{n+1}} \\ \therefore b_{n+1}-b_{n}&=\dfrac{1}{(n+1)(n+2)}-\dfrac{1}{3^{n+1}} \\ \therefore b_{n+1}-b_{n}&=\left(\dfrac{1}{n+1}-\dfrac{1}{n+2}\right)-\dfrac{1}{3^{n+1}} \end{align}$$を得る。

 

ここで、$n \geqq 2$ のとき、$$\displaystyle \sum^{n-1}_{k=1}\left(\dfrac{1}{n+1}-\dfrac{1}{n+2}\right)=\dfrac{n-1}{2(n+1)}$$および$$\displaystyle \sum^{n-1}_{k=1}\dfrac{1}{3^{n+1}}=\dfrac{1}{6}-\dfrac{1}{2 \cdot 3^{n}}$$が成り立つので、$$b_{n}=\dfrac{n-2}{3(n+1)}+\dfrac{1}{2 \cdot 3^{n}}$$を得る。これは $n=1$ のときも成り立つ。

 

故に、$$b_{n}=\dfrac{n-2}{3(n+1)}+\dfrac{1}{2 \cdot 3^{n}}\ \ \cdots (\text{答})$$となる。

 

 

(2)

 

(1)より $b_{n}=\dfrac{n-2}{3(n+1)}+\dfrac{1}{2 \cdot 3^{n}}$ であるから、$$\begin{align}a_{n}&=3^{n}(n+1)(n+2)b_{n} \\ \therefore a_{n}&=3^{n-1}(n-2)(n+2)+\dfrac{(n+1)(n+2)}{2} \\ \therefore a_{n}&=3^{n-1}(n^2-4)+\dfrac{(n+1)(n+2)}{2} \end{align}$$を得る。これはすべての自然数$n$で成り立つ。

 

故に、$$a_{n}=3^{n-1}(n^2-4)+\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}\ \ \cdots (\text{答})$$となる。

 

 

(3)

 

すべての正の整数$n$に対して$3^{n-1}(n^2-4)$は$3$の倍数であるから、$a_{n}$を$3$で割った余りは$\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}$を$3$で割った余りに等しくなる。

 

以下、$k$を正の整数とする。また、$(n+1)(n+2)$は隣接する2整数の積であるから常に偶数であり、$\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}$はすべての正の整数$n$に対して整数となることに注意する。

 

$n=3k-2$ のとき$$\begin{align}&\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}\\=&\dfrac{(3k-1)\cdot 3k}{2} \end{align}$$となるから$3$で割った余りは$0$である。

 

$n=3k-1$ のとき$$\begin{align}&\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}\\=& \dfrac{3k \cdot (3k+1)}{2} \end{align}$$となるから$3$で割った余りは$0$である。

 

$n=3k$ のとき$$\begin{align}&\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}\\=& \dfrac{(3k+1)(3k+2)}{2}\\=& \dfrac{9k(k+1)}{2}+1 \end{align}$$となるから$3$で割った余りは$1$である。

 

$1$から$2020$までの整数で$3$の倍数であるものは$673$個あるから、$a_n$の初項から第$2020$項までの和を$3$で割った余りは $1 \cdot 673=673$ を$3$で割った余りに等しい。故に$$1\ \ \cdots (\text{答})$$と求められる。


(コメント)

(1)が本問のヤマですね。漸化式は複雑ですが、ヒントが与えられているので十分に訓練を積んだ人ならささっと解けそうです。階差数列から一般項を求める操作が苦手な人はしっかり練習しておきましょう(階差数列については「階差数列の定義・扱い方」のページで解説しています!)。来年以降に施行される「大学入学共通テスト」に向けて、今まで以上に柔軟な対応力を付けておきたいところです。

 

(3)は余りを求める単純な問題です。結局$(n+1)(n+2)$だけを考えればよいことになるのですが、元の項は$\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}$なので、余りの「$\div 2$」を忘れてしまった受験生もいたものと思われます。

本試験の問題文には「$a_{3k}$、$a_{3k+1}$、$a_{3k+2}$を$3$で割った余りはそれぞれ・・・」とあるので$a_1$~$a_3$を求めて穴埋めしてしまうことも可能と言えば可能です。因みに$a_{n}$は小さい方から$0$, $6$, $55$, $339$, $1722$, $\cdots$となります。


あまり時間が取れていませんが、理科系の問題はザッと眺めてみました。物理では日本発の新元素ニホニウムが出題されたようですね。第2問のコンデンサーの問題は設定が目新しく差が付く問題だったと思います。化学では目新しい題材として対数グラフが出題されました。良問も多く、全体的な難度は昨年並みでしょうか。

大学入学共通テストへの移行もそうですが、今回のセンター試験の出題を見渡すと、1次試験が少しずつ2次試験寄りの出題傾向になりつつある気がします。「基礎知識の確認」という共通1次試験の最も基本的な役割が今後の入試改革を経ても維持できるのか、注視すべきように思われます。

 

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