a^2+b^2+c^2=d^2を満たす整数組(一橋大学1994年後期第1問)

昨日に引き続き、方程式 a2 + b2 + c2 = d2 を満たす整数組の剰余に関する問題を取り上げます。


《問題》

正の整数 $a$、$b$、$c$、$d$ が等式 $a^2+b^2+c^2=d^2$ を満たすとする。

(1)$d$が$3$の倍数でないならば、$a$、$b$、$c$ の中に$3$の倍数がちょうど2つあることを示せ。

(2)$d$が$2$の倍数でも$3$の倍数でもないならば、$a$、$b$、$c$ のうち少なくとも1つは$6$の倍数であることを示せ。

(一橋大学1994年 後期第1問)


《考え方》

前回紹介した横浜国立大の類題ですが出題年はこちらの方が古いです。左辺と右辺の剰余が等しくなるような組が限られることを示すだけなので、合同式を使っても良いですが今回は式だけで証明してみます。


解答例

 

(1)

$d$が$3$の倍数でないとき、$d=3k \pm 1$($k$は整数)と置けるから、$$d^{2}=3\left(3 k^{2} \pm 2 k\right)+1$$となる。

 

また、整数 $l$、$m$、$n$ を用いて$a=3 l+p$、$b=3 m+q$、$c=3 n+r$(ただし $p,q,r=0,\pm1$)と置けば、
$$\small \begin{aligned} a^{2}+b^{2}+c^{2}=3&\left\{3 \left(l^{2}+m^{2}+n^{2}\right)\right. \\ & +2(l p+m q+n r)\}+p^{2}+q^{2}+r^{2} \end{aligned}$$となるから$$p^{2}+q^{2}+r^{2}=1$$となる。$p^2,q^2,r^2$は$0$または$1$であるから、これを満たす組$(p,q,r)$のうち2つは$3$の倍数である。したがって、$a$、$b$、$c$ の中に$3$の倍数がちょうど2つある。

 

 

(2)

$d$が$2$の倍数でないとき、$d=2j + 1$($j$は整数)と置けるから、$$d^{2}=4\left(j^{2}+j\right)+1$$となる。

 

また、整数 $L$、$M$、$N$ を用いて$a=2L+P$、$b=2M+Q$、$c=2N+R$(ただし $P,Q,R=0$ または $1$)と置けば、(1)と同様にして$$P^2+Q^2+R^2=1$$を得る。これより $P,Q,R$ のうち2つが$0$であるから、$a$、$b$、$c$ のうち少なくとも2つが$2$の倍数となる。

 

(1)の結果より、$a$、$b$、$c$ の中に$3$の倍数がちょうど2つあり、$2$の倍数もちょうど2つある。故に、$a$、$b$、$c$ のうち少なくとも1つは$6$の倍数である。

 


(コメント)

平方数に関する剰余は頻出テーマなので完答できるように準備しておくべきです。

 

本問に関しては(2)の最後の論証で行き詰ってしまう人が何故か多いのですが、例えば3つのボールのうち2つを赤いペンキで塗って、さらにそのうち2つを青いペンキで塗るとすると、ペンキが2回塗られるボールが1個存在するのは明らかですよね?  $a$、$b$、$c$ のうち少なくとも1つが$6$の倍数であることの論証で場合分けなどを持ち出す必要は全くありません。

 

前回と今回と扱った方程式については当サイトの創作整数問題#45でも扱っていますので、是非取り組んでみて下さい!(#45の解説はこちら

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