紅葉の季節ですね🍁。最近はクマの目撃情報や被害が各地で報告されています。野山を散策する際はしっかり対策して十分に警戒しましょう。
創作整数問題#94
《問題#94》
$a_{1} = 2$、$a_{n} = n + \left\lfloor \sqrt{n}+\dfrac{1}{2} \right\rfloor \ (n=1,2,\cdots)$ で定められる数列$\{a_n\}$には平方数が現れないことを示せ。
(創作問題)
$\lfloor x \rfloor$は床関数で、$x$を超えない最大の整数を表します(いわゆるガウス記号と同じ)。この種の証明問題では、$a_{n}$に近い平方数との大小関係を調べるのが一般的です。
(証明問題のため解答は次回掲載します)
創作整数問題#93(解き方)
(1)実数係数の4次式$f(z)$について、方程式 $f(w)=0$ を満たす複素数$w$が存在するとき、共役な複素数$\overline{w}$も方程式 $f(\overline{w})=0$ を満たすことを示せ。ただし複素数$w$は $w\ne\overline{w}$ を満たすとする。 (2)$z=1+i$、$z=-1+i$ を根とする実数係数の4次式$f(z)$を一つ求めよ。 (3)$93^4+4$ は異なる$3$個の素因数をもつ。これらをすべて求めよ。 |
(1)
$a$、$b$、$c$、$d$を実数として、$f(z)=z^4+az^3+bz^2+cz+d$ と置く。$x$、$y$(ただし $y\ne 0$)を実数として $w=x+iy$ と置くと、$f(x+iy)=0$ より、
$$\small \begin{aligned} & \quad (ax^3-3axy^2+bx^2-by^2+cx+d+x^4-6x^2y^2+y^4) \\ & +i(3ax^2y-ay^3+2bxy+cy+4x^3y-4xy^3)=0 \end{aligned}$$ $$\small \left\{ \begin{aligned} & ax^3-3axy^2+bx^2-by^2 \\ & \quad +cx+d+x^4-6x^2y^2+y^4=0 & \cdots ① \\ & 3ax^2-ay^2+2bx+c+4x^3-4xy^2=0 & \cdots ② \end{aligned}\right.$$を得る。
ここで、$\overline{w}=x-iy$ であるから、$f(x-iy)$ を展開すると、
$$\small \begin{aligned} & \quad (ax^3-3axy^2+bx^2-by^2+cx+d+x^4-6x^2y^2+y^4) \\ & +i(-3ax^2y+ay^3-2bxy-cy-4x^3y+4xy^3) \end{aligned}$$となる。$y\ne 0$ に注意すると、これが$0$に一致するには$$\small \left\{ \begin{aligned} & ax^3-3axy^2+bx^2-by^2 \\ & \quad +cx+d+x^4-6x^2y^2+y^4=0 & \cdots ③ \\ & -3ax^2+ay^2-2bx-c-4x^3+4xy^2=0 & \cdots ④ \end{aligned}\right.$$が成り立てばよい。ところで、$③$の左辺は$①$の左辺に等しいから$0$であり、$④$の左辺は$②$の左辺に$-1$を乗じたものに等しいから$0$である。
したがって、$f(x-iy)=0$ が成り立つから示された。
□
(2)
(1)より、実数係数の4次式$f(z)$が複素数 $z=1+i$、$z=-1+i$ を根としてもつならば、それらと共役な複素数 $z=1-i$、$z=-1-i$ も実数係数の4次式$f(z)$の根となる。したがって、$f(z)$は$$(z-(1+i))(z-(1-i))(z-(-1+i))(z-(-1-i))$$すなわち$$(z^2-2z+2)(z^2+2z+2)$$を因数にもつ。
よって、求めるような4次式$f(z)$のひとつは、$$\color{red}{f(z)=(z^2-2z+2)(z^2+2z+2)}$$である。
(3)
(2)より、$$(z^2-2z+2)(z^2+2z+2)=z^4+4$$であることに注目し、$z=93$ と置くと、$$\begin{aligned}& \quad 93^4+4 \\ &=(93^2-2 \cdot 93+2)(93^2+2 \cdot 93+2) \\ &=8465 \cdot 8837 \\ &=5 \cdot 1693 \cdot 8837 \end{aligned}$$を得る。したがって、求める素因数は$$\color{red}{5,\,1693,\,8837}$$である。
$x^4+4$ という4次式が因数分解できるという事実は整数分野に詳しい人にとっては常識かもしれませんが、いざという時にこの知識が使えるかというと怪しいという人は多いのではないでしょうか。例えば「$3^6+2^9$ の素因数をすべて求めよ」という問題でも、いきなり出題されると手間取る人は少なくなさそうです。高校数学の先生は試しに出題されてみてはいかがでしょうか(笑)
なお(3)については問題文中に「異なる3個の素因数をもつ」と明言されているので、因数が3個見つかった時点で回答を切り上げてよく、$1693$や$8837$が素数であるか否かについてわざわざ調べる必要はありません。
さて、$x^4+4$ という4次式について、$x=93$ の周辺を調べると、
$90^4+4 = 2^2×17×41×101×233$
$91^4+4 = 5×1693×8101$
$92^4+4 = 2^2×5^2×41×101×173$
$93^4+4 = 5×1693×8837$
$94^4+4 = 2^2×5^2×173×4513$
$95^4+4 = 13×709×8837$
$96^4+4 = 2^2×5×941×4513$
$97^4+4 = 5×13×17×113×709$
$98^4+4 = 2^2×5×13^2×29×941$
$99^4+4 = 5×17×73×113×137$
となっています。
これを眺めると、$91^4+4$ と $95^4+4$ はそれぞれ$1693$、$8837$という $93^4+4$ との共通因数をもっていることが分かります。さて、これは偶然の出来事でしょうか…?