【高校化学】ルシャトリエの原理:平衡の移動を反応商で確かめる

対象:高校化学から大学初年級/前提:動的平衡、濃度、気体の分圧

平衡にある反応へ物質を加えたり、容器を圧縮したりすると、組成が変わって新しい平衡へ近づきます。ルシャトリエの原理は、その変化の向きを考える手掛かりです。ただし「圧力を上げる」と言っても、圧縮するのか、反応しない気体を加えるのかで結果は異なります。

✎反応商Qと平衡定数Kを比べる

A⇌Bという単純な反応を、希薄溶液の濃度で近似して考えます。反応商をQ=[B]/[A]とすると、平衡ではQ=Kです。同じ温度でQがKより小さければBが増える向き、大きければAが増える向きへ進みます。反応商は、その瞬間の組成が平衡条件からどちらへずれているかを表します。

物質を加えると、まずQが変化します。濃度を変えただけで、同じ温度でのKそのものが変わると考えないようにしましょう。平衡への濃度・圧力・温度の影響も、この区別から整理できます。

✎例題:平衡組成を計算する

一定体積でA⇌Bだけが起こり、K=4.0、初めの濃度が[A]=[B]=1.0mol/Lとします。Q=1.0なので正反応が進みます。AからBへ変わった濃度をxとすれば、(1.0+x)/(1.0−x)=4.0です。解くとx=0.60mol/Lとなり、平衡濃度は[A]=0.40、[B]=1.6mol/Lです。

Aを追加した場合も、追加直後の濃度を出発点として同じKを満たす組成を求めます。増やしたAがすべて消費されるという意味ではなく、平衡比を回復するまで反応が進むという意味です。

✎圧縮と不活性気体の追加を区別する

気相のN₂+3H₂⇌2NH₃を理想気体として扱います。温度を保って体積を半分にすると、反応が進む直前の各分圧は2倍です。分圧で書いた反応商は、分子が2乗、分母が合計4乗なので、Qは元の2²/2⁴=1/4になります。元が平衡ならQ<Kとなり、NH₃を生成する向きへ進みます。

同じ容器に不活性気体を加える場合、温度・体積が一定なら、理想気体近似では反応成分の分圧は変わりません。全圧が上がってもQは同じなので、平衡組成は変わりません。一方、温度・全圧を一定に保ちながら不活性気体を加えると、体積が増え反応成分が希釈されます。この反応では気体の物質量が多いN₂・H₂側が有利になります。

✎温度と触媒は何を変えるか

温度を変えるとKも変わります。正反応が発熱である反応では、加熱によって逆反応側が有利になります。ただし平衡で得られる組成と、そこへ達する速度は別の問題です。工業反応では平衡だけでなく反応速度も考えて条件を選びます。

触媒は正逆の反応を速め、平衡へ達する時間を短くしますが、同じ温度・同じ反応のKは変えません。平衡が反応の停止ではないことは動的平衡の解説で確かめられます。

✎確認問題

気体のA⇌Bで、反応前後の気体の係数が同じなら、一定温度で圧縮したときQはどうなる?

理想気体なら両方の分圧が同じ倍率で増えるため、比Qは変わりません。この操作だけでは平衡の移動は起こりません。

触媒を加え、一定時間後の生成物が増えた。平衡定数が大きくなったと判断できる?

できません。平衡に達する速度が増えた可能性があります。同じ時間の組成を比べることと、平衡組成を比べることは異なります。

✎発展:自由エネルギーから移動の向きを表す

同じ標準状態で無次元のQとKを定義すれば、反応ギブズエネルギーはΔᵣG=RT ln(Q/K)です。Q<KではΔᵣGが負、Q>Kでは正となり、上で使った判断に熱力学的な根拠を与えます。厳密なQには活量を用い、気体では理想気体近似なら分圧を標準圧力で割った比を使います。詳しくは自由エネルギーと平衡定数へ進んでください。